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多発性硬化症 改善へ道筋…NCNP研究グループ

2013年3月19日 読売新聞

ms 免疫の異常で脳や脊髄などの中枢神経に炎症が起き、視力低下や手足のまひなどを引き起こす神経難病「多発性硬化症(MS)」。この病気の発症メカニズムを国立精神・神経医療研究センター(NCNP、小平市)神経研究所免疫研究部の山村隆部長と大木伸司室長らの研究グループが解明した。専門家は「より効果的な新薬の開発につながる」と期待する。

 山村部長らのグループはこれまでに、中枢神経を攻撃し炎症を起こすTリンパ球の働きに「NR4A2」というたんぱく質が関わっていることを明らかにしていた。しかし、「『事件の現場』に必ずいることはわかっていたが、NR4A2が犯人かどうかは、この時点ではまだわからなかった」と山村部長は話す。

 今回は、このたんぱく質にさらに着目し、MSに似た症状を示すマウスに、NR4A2の合成を妨げる物質を注射したところ、症状に改善が見られた。この結果から、体内でNR4A2の合成を抑えることでMSの症状を軽減できることが明らかになった。

 国内のMSの患者数は推定約1万3000人で、この30年間で20倍以上に増加したといわれている。山村部長によると、MSは元々、欧米人に多い病気で、近年の食生活の欧米化が原因の一つと考えられるという。

 現在、ステロイド投与などの治療法があるが、すべての患者に効果があるわけではなく、より効果的な治療法の開発が待たれている。同センターには2010年、医師と研究者が連携してMSの治療と研究開発を進める「MSセンター」が開設され、全国から患者が訪れている。

 MSセンター長でもある山村部長は「MSは20代を中心に若くしてかかる人が多く、一生病気を背負っていかなければならない。既存の治療薬が効かず絶望感を持っている患者も少なくない。今回の研究で新しい治療法の戦略が見つかった。臨床研究に発展させ、新薬開発につなげたい」と話している。

 
他の研究にも 広がる可能性

 東北大大学院でMSの治療法を研究している藤(ふじ)原(はら)一男教授は「発症に直接関わるたんぱく質を見つけたことは、MSだけでなく似たメカニズムを持つ他の自己免疫疾患の研究にも役立つ可能性がある。人においてどのくらい有効かが気になるが、その臨床研究への道筋を示してくれた」と評価している。