県指定病院も1人当直 周産期母子医療 医師不足が深刻化
(2008年10月29日 読売新聞)
脳出血を起こした東京都内の妊婦が8病院に受け入れを拒否され、出産後に死亡した問題は、医師不足に悩む県内の医療関係者にも、重症患者をどう受け 入れるのか、改めて課題を突き付けた。県内では、病院間で情報を共有して効率的な搬送に努めているが、産科医不足という根本的な問題は解消されておらず、 医師の確保は急務だ。(谷川広二郎、岡部雄二郎)
女性が出産した都立墨東病院は、最重症の妊産婦や新生児の救命にあたる「総合周産期母子医療センター」に指定され、県内では県立中央病院がその役割を担っている。国は態勢の目安として、「常時2人以上の産科医が勤務することが望ましい」としている。
しかし、県立中央病院の当直時間帯(午後5時〜午前8時15分)は産科医が1人。常勤医が6人しかおらず、複数の医師で当直にあたるのは難しい状 況だ。このため、当直の医師のほか、医師1人を自宅待機とし、緊急時に呼び出して対応している。ただ、他病院から頻繁に妊産婦が救急搬送され、ベッドは常 に満床状態。佐藤秀平・総合周産期母子医療センター長(47)は「限界を超えている。綱渡り的な状況」と話す。
また、比較的高度な産科医療にあたる「地域周産期母子医療センター」のうち、八戸市立市民病院と国立病院機構弘前病院も当直の産科医は基本的に1 人。青森市民病院とむつ総合病院は当直の産科医がいない。青森市民病院は常勤の産科医が3人。日中でも手術や救急治療で人手が足りずに受け入れを断るケー スがあるといい、青森市民病院の工藤明総務課長は「現体制では24時間体制を組むのは難しい。もともとパイが少ない産科医は、どこの病院でも不足してい る」と窮状を訴える。
では、県内で妊産婦が重症になった場合、どう対応しているのか。
県内では、病院間で病床の空き状況などを共有する「県広域災害・救急医療情報システム」が構築されている。産科も、県内の主な病院の病床数や対処 できる症状などが一覧で公開され、開業医から大学病院まで県内のすべての産科が専用パソコンで閲覧できる。情報は毎日更新され、救急搬送時の参考にしてい る。
さらに、都内で起きた妊婦受け入れ拒否問題は、患者が妊婦だったために妊婦特有の合併症を専門とする周産期母子医療センターに搬送したが、県内で は県立中央病院が司令塔となって、心筋梗塞(こうそく)や脳血管障害といった偶発的な重症合併症に対応できる病院を探して搬送先を指示している。
県立中央病院の佐藤センター長は「周産期という狭い視点ではなく、合併症そのものの担当科ですぐに治療を行える医療体制をとっている」と話す。ただ、「情報共有は少ない医者や施設を最大限に活用する工夫でしかない」とし、医師不足解消の必要性を訴える。
県医療薬務課は、「医師の確保はすぐにはできないが、医師の養成と定着のため自治体と連携し、確保に努めたい」としている。