睡眠導入剤 悪用広がる
2010年2月6日 読売新聞
首都圏や鳥取県で起きた不審死事件で、被害男性の遺体から睡眠導入剤が相次いで検出された。刃物や鈍器と異なり、遺体に異状が現れにくく、力を使わなくても相手を無抵抗な状態にできる。過去の殺人事件でも度々悪用されてきた薬物が、処方のハードルが低下するなどして入手しやすくなっているとの指摘が出ている。
「前に通っていた精神科でも睡眠導入剤をもらっていたので処方してください」。埼玉県警に殺人容疑で逮捕された
医師は9月までに計7回、毎回約2週間分を処方。埼玉県内で昨年8月、レンタカーの中で遺体で見つかった
複数の精神科医によると、睡眠導入剤の主流は、依存性が強く、大量に摂取すると呼吸困難などを起こして死に至る恐れのあるタイプから、精神安定剤の効果を 持つ副作用の少ないタイプに移ってきている。ある精神科医は「昔は『難しい薬』というイメージがあったが、最近は安全なので処方しやすい。内科の医師が気 軽に処方するケースも少なくない」と明かす。
しかも現状では、複数の精神科を回り、多量の睡眠導入剤を手に入れることも可能だ。
2007年には、複数の病院からかき集めた睡眠導入剤などを販売したとして、都内の30歳代の男が山口県警に麻薬取締法違反容疑で逮捕された。男の自宅からは3000錠近い睡眠導入剤が見つかった。
通院負担軽減などを目的に健康保険法に基づく療養担当規則が改訂され、08年4月からは、代表的な睡眠導入剤の1回の処方が、最大14日分から30日分まで拡大されてもいる。
精神科医の一人は「患者の悪意を見抜くのは困難。眠れず、つらいと訴えがあれば、処方するしかない」と話す。厚生労働省医事課も「患者が責任を持って正し く使ってもらうしかない」との立場。担当者は「処方などは、医師の診断に基づき個別具体的に決められるもの。規制をかけるのは現実的ではない」と話してい る。
睡眠導入剤 神経の緊張や不安を取り除くなどして、寝付きを良くする薬物の総称。抗不安薬の作用を持つものもある。依存症や健忘などの副作用があり、大量摂取や、アルコールと一緒の服用で効果が増強される。